東京地方裁判所 昭和46年(借チ)2035号 決定
〔主文〕1 申立人が相手方に対し金九九二、〇〇〇円を支払うことを条件に、申立人が別紙目録(一)記載の土地賃借権を東京都豊島区北大塚一丁目一九の二株式会社西武企業社に譲渡することを許可する。
2 前項の譲渡がなされた場合、前項の金員支払の日の属する月の翌月から本件賃貸借の賃料を一か月金二、七二七円に変更する。
〔理由〕一 本件申立の要旨
(一) 申立人は、昭和二三年七月一五日小宮金一郎から、別紙目録(一)の中1記載の土地(以下「本件土地」という。)を賃借し、その後相手方が賃貸人の地位を承継し、本件土地の現在の借地条件は同目録(一)記載のとおりである。
(二) 申立人は、本件土地のうえに、別紙目録(二)記載の建物(以下「本件建物」という。)を所有している。
(三) 申立人は右土地賃借権付の建物を主文掲記の株式会社西武企業社に譲渡したいが、相手方との間に右土地賃借権の譲渡につき協議が調わないので、相手方の承諾に代わる許可の裁判を求める。
二 当裁判所の判断
(一) 本件で取調べた資料によれば、前記一の(一)(二)の事実および譲受人である主文掲記の西武企業社の社会的、経済的信用に欠けることはなく、本件土地賃借権を同社に譲渡しても、賃貸人に不利となる虞れはないことが認められる。他に右譲渡を不当とする事由はない。そこで本件申立は後記の条件のもとに許可するのが相当である。
(二) 附随処分について判断する。
鑑定委員会は、本件土地の更地価格を一平方米当り金七〇、〇〇〇円、建付地価格をその約八五%、借地権価格をその七〇%とそれぞれ評価し、申立人に対し、財産上の給付金として、右借地権価格の七%にあたる一平方米当り金二、九四〇円、合計五三五、〇〇〇円を支払わせ、賃料を月額金二、七二七円(一平方米当り金一五円)に改訂するのが相当である。としている。
当裁判所も、本件土地の借地権価格につき、本件建物が老朽化していることおよび借地の残存期間も考慮し、鑑定委員会の評価額である一平方米当り金四二、〇〇〇円を相当と認める。ところで、右のごとき高額な借地権価格が形成されたのは、土地価格の著しい謄貴に地代の上昇が伴わず、借地人に経済的利益(借り得)が発生したところにあって、その原因は、借地人の土地利用の巧拙によらざる、地価の高謄という社会経済的原因によるところが大きいのであるから、借地人がこれを譲渡して利益を顕在化するに際しては、その一部を賃貸人に還元するのが相当である。しかしてその還元割合は、譲渡利益の一〇ないし一五%を標準とするが、本件資料によれば、本件賃貸借は、その設定の際権利金等の授受のない、いわゆる自然発生的借地権に属し、その後も地代以外の金銭も授受されていないが、右地代は極めて低額であつたことを認められ、右事実を考慮すると、申立人に支払わせる給付金は譲渡利益である右借地権価格の一三%にあたる金九九二、〇〇〇円(千未満切捨て)とするのが相当である。
賃料については、鑑定委員会の定める額は、近隣地代および純利廻りからみて低額であるが、本件建物は老朽化していて、本件土地の利用状況は、最有効使用にはかなりへだたりがある。したがつて地代徴収権たる底地価格も低下するのはやむをえないことであるから、当裁判所も、右委員会の意見を相当と認め、これに従う。その他の借地条件を変更する必要はない。 (筧康生)
目録 (一)
(借地条件)
1目的土地 東京都板橋区小茂根一丁目一五番地
宅地 2012.72平方米
(608.85坪)のうち、181.81平方米(55坪)
2賃貸人 相手方
3賃借人 申立人
4目的 非堅固建物所有
5期間 昭和二三年七月一五日から定めし
6現賃料 一か月金一、一〇〇円
目録 (二)
(現存建物)
東京都板橋区小茂根一丁目一五番
家屋番号 一五番四
木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建
居宅 38.01平方米